| 千葉大学言語教育センター,現代GPホームページへようこそ. 千葉大学言語教育センターでは,1994年その前身となる外国語センター設置以来,コンピュータを利用した英語コミュニケーション能力養成システムの開発とその教育実践に努めてきました.その成果が実り,平成19~21年度,文部科学省による現代的教育ニーズ取り組み支援プログラムの助成を受けることになりました.本ウェブサイトでは,これまでの研究成果をさらに発展させるプロジェクト「統合型英語 Online CALL システム」について紹介いたします. |
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本研究の目的は,これまでスタンドアロン形態で効果をあげてきた千葉大学の英語CALL教材(聴解力,語彙力養成用)を学内のサーバーに配置し,主に1-2年次学生が教室,自習室,図書館,研究室,自宅のいずれの場所からでも効率的に英語学習ができるWeb対応一般英語コミュニケーション能力養成CALLシステムを開発することである.さらにWebを通して専門分野英語講義や学術語彙を学習するためのCALL教材を整備し,専門課程で学ぶ3-4年次学生や国際学会に出席する英語力が求められる院生に寄与できる専門英語コミュニケーション能力養成用CALLシステムを開発して,本学に在籍する学生であれば,教養・専門・大学院一貫教育として,いずれの期間においても,時間,空間の制約のない英語教育を受けることのできる統合型Online CALLシステムの開発を行った. |
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我が国の英語教育が飛躍的に向上すると期待された時期が何度かあったと言われる.それはテープレコーダ,LL,2ヶ国語テレビ放送,ビデオテープレーダーの普及である.残念ながら,これらの技術革新によって英語教育の効果が飛躍的に向上したという報告はない.このことは学習対象である英語を提示するだけでは,その効率的学習は達成されないことを如実に物語っている.昨今,パソコンとインターネットの普及にともない,CALLシステムやe-Learningシステムに対して大きな期待が寄せられているが,我々が見る限り,同じ過ちを繰り返す可能性が高い.それはCALLシステムやe-Learningシステムの開発研究の主眼が主にハードウェアやソフトウェアに置かれ,英語教育を効率的に行うための教材開発研究が決定的に不足しているからである. このような流れのなか,本学教育学研究科,自然科学研究科は「英語」,「日本人英語学習者」,「言語学習行動」の実態に関する緻密な基礎研究を続け,日本人の英語コミュニケーション能力を効果的に養成する独創的な指導理論「三ラウンド・システム」を開発した(竹蓋,1997).言語教育センターは,平成6年度,その前身である外国語センター設立当初から両研究科と協力し,その理論に沿って英語コミュニケーション能力を効果的に養成するための教材を開発し,その高い効果について報告してきた. しかしながら本学のCALLシステムに問題がなかったわけではない.それは開発された教材が教室,自習室での自習を主とするスタンドアロン形態であるため,学生がいつでもどこでも学習できる環境の提供に至っていなかった点である.さらにはCALLシステムが主に普遍教育(一般教養課程)のカリキュラムの枠内で管理,運営されているため,3-4次学生や院生の利用が難しい状況にもあった.普遍教育,専門教育,大学院教育を通じての英語教育の効率化は本学の中期目標の「英語教育を重視し,コミュニケーション能力及び専門分野における運用・発信能力を効率的・効果的に育成する」ことを達成する上でも重要な課題であった. 以上の趣旨を踏まえた上で,統合型英語Online CALLシステム(図1)開発の具体的目的を以下の5点に設定した:1) 従来スタンドアロン形態で開発された一般英語コミュニケーション能力(聴解力・語彙力)養成用CALLシステムに必要な著作権処理をし,Web(Internet)経由で配信するOnline型に移行し,本学の学生,院生がIDとパスワードを取得すれば,学内外から自由に利用できるEGP CALLシステム,および学習履歴管理システムの開発を行う,2) 3-4年次・院生用の指導として,EGP CALLシステムによる自律学習に加え,専門分野の英語講義や論文作成に必要な英文法・英作文に関する講義をWeb配信するOnline講義型CALLシステム,および専門・学術語彙力養成用ESP CALLシステムを開発する,3) 円滑な教材配信のため,学内に主,予備の2機のサーバーを配置する,4) 統合型Online CALLシステムの開発に合わせて,従来のスタンドアロン型教室1室(60端末),自習室2室(120端末)の設備更新,およびネットワーク化を行う,5) 統合型Online CALLシステム全体の成果として,4年ないしは6年間の使用で,一般企業が「入社前にこれくらいのスコアは欲しい」と指摘することの多いTOEIC 600点以上の達成を目指す. |

図1 統合型 Online CALL システムの概念図
| 本取り組みの目的を達成するための教育方法は,1) 独自開発された英語指導理論「三ラウンド・システム」に基づいたEGP CALL教材(聴解力,語彙力),2)
ESP CALL教材(Online Lecture,専門・学術語彙)をWeb配信し,高い教育効果を持つ教材による学習機会を本学学生に広く提供することである.1-2年次学生にはこれまで高い成果(頁10参照)を上げている授業と自習(自習室+家庭による学習)を融合させた普遍教育における教育課程(1年次用:週2回半期30回,2年次用:週1回半期15回)の形態を継承する.本取り組みのもうひとつの特徴である3-4年次,院生の指導については学習希望者を募り,Webによる自習を中心としながら,ガイダンス,授業,試験を定期的に行うとともに,学内実施のTOEIC
IPの受験を義務化し,得点に応じた単位認定制度の設定に努める.具体的な実施体制は研究代表者の所属する言語教育センター教員6名が各種CALL教材の整備を行う.カリキュラムの開発については6名に,普遍教育センター長,および普遍教育課長を加える. Online Lecture型CALL教材は専門分野の英語講義を素材とし,その理解を補助する情報(アウトライン,語句)を講義と同期して提示することにより,従来難しいとされていた専門講義の内容理解を可能とした新規開発のCALLシステムである.その開発にあたっては協力の得られる学部専門分野教員(以下学部教員)が推薦する国内外のネイティブスピーカ専門分野研究者の英語講義を収録,使用する.教材化にあたっては学部教員とその研究室の学部学生,院生に協力を依頼する.英文法Online Lecture講義は,大学院生の書いた論文上の誤りをテーマ別に分類,解説する言語センター教員による講義である.専門・学術語彙力養成用CALL教材の開発については,上記ネイティブスピーカに専門語彙,学術語彙およびその用例の抽出を依頼し,学部教員,職員,学生の協力をもとに教材化する. EGP CALL,および ESP CALL教材のWeb化は,おもに教員,非常勤職員,学生が行うが,ファイル変換等の技術的な作業については業者に委託する.教材配信システム,学習履歴管理システムの開発については,教員が業者と討議し仕様を決定した上で,外注の形態とする.またメディア基盤センターには学内サーバー設置,管理の支援を依頼する.学外では文京学院大学,大阪大学と連携し,教材の試用,動作検証を依頼する. 会計管理,履修に関する事務的業務はすべて,普遍教育課の職員が行う.現有の非常勤職員2名(各週30時間)についてはCALL教室,副教室,自習室の管理を行う.また人件費から非常勤職員(週30時間)や学生,TAを雇用し,教材作成補助,3-4年・院生用授業の授業補佐にあてる.取り組みの実施体制については図2に示した. 大学生が入学後,普遍教育,専門教育,大学院教育のいずれの在籍期間においても質の高い英語教育を,時間や空間の制限なく自由に受けるための環境を学習者に提供する取り組みは新規の試みであり,社会が求める英語力に少しでも近づいた英語力を備えた卒業生を社会に出す取り組みとして,大きな成果が期待できる. |

図2 統合型 Online CALL システムの実施体制
| 従来の普遍教育の枠組みの中で行う1-2年次のCALLを利用した教育の評価については,従来通り学習前後に行うTOEIC公開問題のスコアの上昇を観察して行い,半期週2回で50点の上昇を目標とする.3-4年次および院生のCALLを利用した教育の評価については,学習後の学内TOEIC IPの受験を義務付け,500~600点の到達を目標とし,目標を達成した学習者に対して単位を認定する方策を検討する.統合型Online CALLシステム全体の成果として,4年ないしは6年間の使用で,TOEIC 600点の達成を目指す.またTOEICの得点上昇と学習時間,学習方法等の学習履歴の関連を分析し,学習の中盤で学習上問題がある学習者を抽出し,特別な指導を与えることのできる手法を開発し,システム全体の効果をさらに高める努力をする.さらには取り組みに参加した学部教員やCALLシステム使用者に対するアンケート調査を実施し,教材,授業改善のためのFD資料とする. |
| ある調査によればアメリカ人は高校を卒業するまでに50,000時間英語を耳にしているのに対し,日本人はわずかその50分の1だと言う.この差は決定的で,仮にCALLによる指導が効果的であったとしても,授業時間だけ学習していたのでは社会が求めている英語力に到達することは到底不可能である.本取り組みの教育方法における特色のひとつは,外国語学習の時間不足の解消の方策のひとつとして,CALL教材をWeb配信し,意欲を持った学習者ならいつでもどこでも効率的英語学習を行う環境を提供することを可能にしているところにある. 一方我々が2005年に行った調査(竹蓋・水光, 2005)では,近年CALLやE-Learningと銘打った開発報告や教育実践報告は多いが,情報の提示やテストを繰り返すだけの教育効果の期待できないものや発音,単語,文法,TOEICテスト対策等局部的な指導にはある程度使用できたとしても,英語のコミュニケーション能力の育成には至らないもの,教育効果の不明な業者開発のシステムをそのまま導入したものがほとんどである.また教材の数や種類についても半期分,通期分といった程度で仮にハードウェアが高度なものであったとしても,コンテンツの数が極めて限られており,外国語の習得に膨大な時間を要することを考慮すると,我が国の大学に入学する学生の英語コミュニケーション能力を社会が要求するレベルにまで引き上げることは困難である.また我々が1425名の学習者のデータをもとに調査した研究では,学習者のレベルに合ったCALL教材で学習した場合とそうでない場合ではTOEICの得点上昇で測定した教育効果に大きな差があり,学習者のレベルにあった教材が多数あることは効果的英語教育に不可欠であることが実証されている.本取り組みは,1) 高い教育効果が実証されている指導理論に基づき開発がすでに多数終了している教材をWeb化して使用する,2) 初級(TOEIC 380~)から上級(TOEIC 660~)レベルの5段階に分けたレベル別教材の利用が可能で,学習者に適した教材を使用できる,3) 15種の聴解力養成教材を連続使用することにより初級の学習者の英語力を社会が求めるレベルにまで高めることが可能である,4) 講義,研究発表といった学術レベルの英語使用を支援する教材提供が可能であることなど,これまで例のない実践となると考える. さらに本取り組みは今日,大学の英語の授業数が減少するなかで,必要とされながらも効果的手段がなかった3-4年次学生や院生の英語力向上についても包括的に取り組んでいるだけでなく,学習をサポートするための授業や試験を組み合わせ絶えず必要な動機付けを行うことにより,その習得に時間がかかり,継続が難しい英語学習を実現させようとしている点も教育課程の特色と考える. 実施体制については,従来は「英語は教養で」「専門は学部で」という区分けが存在し,普遍教育担当教員と学部教員が協力しながら専門課程に通じる英語力の養成が行われることがなかった.本取り組みでは,専門英語講義を使った発展型教材や専門・学術英語語彙学習のための教材を言語教育センター教員と学部教員が共同で開発し,Web配信するという協力体制を基礎としており,専門につながる英語教育の今後の実施形態のひとつとして,新しい体制例を提示できると考える. |
| 本研究で開発するEGP CALLシステムはすべて「三ラウンド・システム」にその基礎を置く.三ラウンド・システムは自然な速度で発話された素材を使いながら,学習成立に不可欠な情報を,必要な場面で必要な量だけ学習者に与えることにより,学習者が問題解決作業をしながら英語コミュニケーション能力を養成することを可能とした指導理論である.三ラウンド・システムではひとつの素材を一度の学習で終了させず,3回のStepにわけて学習させる.各Stepの学習目標はStep
1が話題,トピックの推測などの大まかな理解,Step 2が言われていることの詳細な理解,そしてStep 3が発話の意図,結論等の理解で,徐々に難易度の高いタスクを与える.また学習の順番も,ひとつの素材を続けて学習するのでなく,Stepごとに4つから5つの素材(ユニット)を通して学習する形態を取り,ひとつの素材を結果的に断続的に3回に分けて学習するという特徴を持つ(図3) |

図3 三ラウンド・システムの構造(竹蓋,1997)
| この指導理論に従い,我々がこれまでに開発した英語聴解力養成CALL教材は,大学初級~上級レベルにわたる15種で,アメリカの日常生活,大学生活,学術内容,報道,映画などを扱ったものである.これらの教材はメディア教育開発センター(NIME)の委託研究,文部科学省科学研究費補助金等の助成,千葉大学学長裁量経費の助成を受けて開発された.一方語彙力養成については,ビジネス英語,学術英語,大学新聞語彙を扱った計8種,延べ1120語,2240用例を学習する教材の開発が終了している.さらに平成18年度は千葉大学学長経費の助成等を受け,米国アラバマ大学で取材した英語講義(8種,30分×14本)をWeb配信するOnline講義型CALL教材の試作も終了している(高橋他,2008).開発された聴解力養成教材,および語彙力養成教材の画面例を図4,5に示した. |

我々はこれらのCALL教材を使用した教育実践を14年間続けてきた.図6は平成15年度にCALL教材を利用して学習した602名全員の教育効果をTOEICの得点上昇で測定したものである. |

図6 1年次クラス(半期週2回)の教育効果(高橋,2006)
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表1 教材・授業に対する学習者の評定結果 三ラウンド・システムに基づいて我々が開発したCALL教材の高い評価は千葉大学だけでなく,他大学からも数多く報告されている.表2は東京大学学生における千葉大学開発のCALL教材に対する評価を示したものである(鈴木他,2005).授業に対する満足度が大きいだけでなく,予習・復習の時間が他の英語授業と比較して,格段に多い.図6は同授業の教育効果を第2回TOEIC公開問題のListening Section(495点満点)で測定した結果(高橋他,2004)であるが,半期12回の授業の効果としては極めて高いと言える. |
| 表2 東京大学における本学CALLに対する評価 |

図7 CALL教材の教育効果
| 表3は京都大学で平成11,12年度にCALL教材を使用した学習者にアンケートを実施した結果(2ヵ年度4教材分の平均)を示したものである.授業担当者からは「多少のことでは満足したと言いたがらない京大生たちの8割以上が満足したという結果を出す教材は他にその存在は知られていない.」と記している(水光, 2005).教育実践の難しさに,複数年にわたり連続して効果を上げ続けることがあげられる.初年度はCALLに対する目新しさやテストへの練習効果も手伝って,偶然に高い効果をあげることがあっても,次年度はその継続が難しいからである.図8に示した文京学院大学外国語学部の報告(草ヶ谷他, 2005)では,1年半にわたり,継続的に高い効果をあげたことが示されている. |
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表4は伝統的な指導法による授業を5つ履修した統制群と5つのうちひとつを三ラウンド・システムに基づいたCALL教材を使用して学習した実験群の指導の効果を比較したものである(竹蓋・水光, 2005).5つのクラスのうちひとつを置き換えるだけで,大きな効果を得たという事実は,開発された教材の教育効果の高さを明確に示すものである. |
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表4 実験群と統制群に対する指導の比較 |
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被験者群 |
事前テスト TOEIC®-IP |
事後テスト TOEIC®-IP |
上昇 |
t |
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実験群 (14名) 統制群 (88名) |
493 373 |
594 402 |
101 29 |
3.67* p<.05 |
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Web 上のプログラムはデータをクライアント側にファイル出力することができないため,学習履歴管理機能を備えた学習起動用プログラムをクライアント側に置き,このプログラムがWeb 上の学習プログラム本体を呼び出して実行する形とした.図10はExcelに記述されたコースウェアのサンプルである.原則としてExcelの1行が教材1画面に相当する.1列目にはTASK, HINT, ANSWERのような各行の特性を示す記号が記述されており,これらを手がかりにコンバータが学習プログラムに変換する.変換後の実際の学習画面例を図11に示した.テキスト情報だけでなく,必要な静止画,動画,辞書機能等が自動的に組み込まれる.開発されたこの新教材開発環境により,従来の1/10以下のコスト,期間で,従来の教材群と同じ効果を持つWeb対応型CALL教材の開発が可能になった.ただしこのシステムによって開発される教材は,インターネットエクスプローラ,メディアプレーヤの機能を活用するもので,Windows以外のOS,インターネットエクスプローラ以外のブラウザには対応していない.

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■ 専門課程における英語指導に関するアンケート調査 |

| ■ ハードウェア Online CALLシステムを開発するにあたり,ハードウェア整備上の最重要課題は教材をWeb配信し,学習履歴を関するためのWebサーバーの新規導入と老朽化したCALL教室と自習室の設備更新であった.サーバーについては教材の配信形態,配信情報量,アクセス数等を検討して機種選定を行い,主要機,予備機の2機(図12)を設置した.主要機に異常があった場合,予備機に自動的にアクセスが移行する設定とし,有事に備えた.クライアント機についてはWindows XP×60機(CALL教室,図13),Windows XP×14機(図書館,図14)Windows XP×60機(自習室,図15)を,必要に応じて新規に設置するか,現有機にメモリ,HDを増設するなどの拡張を加えた.Online CALLシステムの仕様に対応していないWindows 95-98機はすべて廃棄した.整備が完了したサーバー,およびクライアント機の仕様は表6に示した.クライアント機はすべて独自に開発したCALL教材の使用に限られるため,学内設置のサーバーにのみ接続される形態としインターネットへの接続はあえて行わなかった. |
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| ■ Online CALLシステム学習メニュー 端末からOnline CALLシステムによる学習を起動するためのメニューを図16に示した.メニュー左側のボタン群から聴解力養成教材へ,右側のボタン群からは語彙力養成教材へ,そして左下のボタンから専門講義教材へのアクセスができる.メニューは汎用のホーム作成用プログラムを使用して開発された htmlファイルで,新規教材追加によるメニューの変更が容易に行えるような設計とした. 学習者が自宅から自身のパソコンを使用してアクセスする場合,パソコンの設定状態によっては聴解力教材へのアクセスが制限された設定となっている場合がある.そこでそのような場合は,教材起動用プログラムと設定ファイルをダウンロードし,そのプログラムから教材へのアクセスする形態とした.教材のダウンロード方法については「資料編」に示した. |

■ 聴解力養成教材 上記のOnline CALLメニュー,または教材起動用プログラムから聴解力養成教材を起動すると,図17に示すようなログイン画面(認証画面)が表示される.前もって登録された学生証番号,およびパスワードを入力すると教材学習画面が提示される.図18,図19には教材起動画面,およびメニュー画面を一例ずつ(A Bit of Britain)示した. Online CALLシステムとして稼動可能となった聴解力養成教材は科学研究費補助金で開発された教材8種,メディア教育開発センターの委託研究として開発された教材4種,千葉大学教育改善推進費で開発された教材1種,そして千葉県教育委員会長期研修制度と本事業で協力して新規に開発された教材1種の計14種である.教材のオリジナル版をOnline化するにあたっては,内容の変更を最小限にとどめながら,教材構成,仕様の変更を行うとともに,静止画の追加等,必要な修正,必要な著作権処理を行った.14種のOnline聴解力養成教材のタイトル,内容,レベルは表7に示した.これらの教材を使用した場合の学習履歴(学習日時,学習時間,得点等)はすべて,教材 Unit, Part, Section ごとに記録され,管理者がモニタすることができる.教材のスクリプト例,および全教材の起動画面,メニュー画面2点は「資料編」含めた.これら聴解力養成教材はすべてEGP CALLシステムに分類される. |

![]() 図18 A Bit of Britain起動画面 図19 A Bit of Britainメニュー画面
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■ 語彙力養成教材 語彙力は英語を「読む」,「書く」,「聞く」,「話す」といういずれの技能にも不可欠で,コミュニケーション能力の基礎と言っても過言ではない.語彙力養成教材は選定された各種分野の語彙を,音声と用例を用いて,以下の8つの学習ステップを経て学習させ,語彙および用例を記憶に強く定着させることを目的とする.1教材14セット(各セット,10単語,20用例)からなる語彙力養成教材のオリジナル版(MS-DOS版)は竹蓋他(1996)で開発され,高橋(1999)によるWindows版への移行を経て,今回Online CALL化されたものである. 1) 各セットの語彙に相応しい静止画を提示し,学習語彙の音声を1語ずつ提示する 2) 語彙の綴りと和訳の一覧表を提示し,学習者の選択した語彙の音声を提示する 3) 句,または節からなる短い用例を2例ずつ提示し,音声と和訳を確認させる 4) 学習語彙の綴りから和訳を想起させる 5) 和訳から学習語彙を想起させた後,語彙と意味を関連させながら筆記練習させる 6) 学習語彙を空所にした用例からその語彙を想起させ,音声と綴りで確認させる 7) 語彙の綴りと和訳の一覧表を提示し,学習者の選択した語彙の音声を提示する 8) 各セットの語彙に相応しい静止画を提示し,学習語彙の音声を1語ずつ提示する Online版語彙力養成教材の開発にあたってはその教材開発環境,仕様を聴解力養成教材に準じた形式とした.具体的に言えば図9に示したように 1) 必要な静止画,音声は各種エディタを使用して編集し,一定の規則に従った名前を付けて保存する,2) テキスト情報は一定の規則に従ってエクセル上に記述し,専用のコンバータを使用してxmlファイル形式のデータベース変換する,3) 学習実行プログラムはxmlファイルをもとにJavaScriptおよびインターネットエクスプローラ,メディアプレーヤの機能を使用して,学習者に教材データを提示するという形式である.この手法の採用により,1教材約3,000を超えるリンクを手動で指定することなく教材を組み上げることが可能となった. 教材の起動はOnline CALLメニューから語彙力養成教材起動用ボタンを押し,図17に示したログイン画面(認証画面)に学生証番号,パスワードを入力して行う.これまで開発されていたOffline型のビジネス英語,学術英語,大学新聞英語,計8種の教材のOnline化(EGP CALL)とともに,新規に7種の専門分野語彙学習のためのESP CALL教材が加えられた. EGP CALL教材の語彙選定は,各分野で使用される語彙で,中・高等学校の教科書で使用されない語彙のうち上位頻度のものを抽出,分類する形で行われた.ESP CALL教材についてはネイティブスピーカを1名雇用し,経済学,医療などの専門分野に関連する英語語彙をインターネット,文献等から抽出し,例文を作成させた.ESPとは言え,あくまでEGAP(一般学術目的の英語)のための教材開発を目指し,各専門分野に関して特別な知識がない人でも,ネイティブスピーカであれば,理解できる範囲の語彙とした. 学習履歴は聴解力教材同様,学習日時,学習時間が学習箇所ごとに記録,集計される.開発が完了した15教材のタイトル,内容は表8に,図20,21には語彙教材の画面例2例,さらに全語彙教材の画面例2点と語彙および用例のサンプルは「資料編」に含めた.
![]() 図20 語彙力養成教材画面例(コンピュータ科学) 図21 彙力養成教材画面例(医療)
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| ■ 試験実施システム CALLシステムを利用した授業では学習者はそのレベルに応じた聴解力養成教材を使用するため,評価のための試験を実施する場合,教材ごとに異なった試験を実施する必要がある.千葉大学ではCALLシステムの導入時にすでに独自開発のMS-DOS版の試験実施システムを開発し(土肥他,1996),その後Windows版へと移行作業(高橋, 2002, 2003)を行った. Windows版の試験実施システムではテスト結果保存用のフロッピーディスクとともに,テストデータ(テキスト,静止画,音声)をCD-ROM媒体で配布し,端末内に保存されたテスト実施プログラムを起動する形態を採用していた.Online試験実施システムではテスト起動用のフロッピーディスクのみを配布し問題の提示はサーバーから行い,受験記録はサーバーに自動的に保存される形式とした.テスト起動プログラムは端末に置くことも可能である.受験には学生証番号,パスワード,教材名の入力が要求される.試験は単元別試験と習熟度試験の2種類に分けられる. ■ 単元別試験 |

図26 単元別試験画面例(ディクテーション形式) 図27 単元別試験画面例(オープンエンド形式)
| ■ 習熟度試験 習熟度試験は聴解力養成1教材全体の理解度を確認するための試験で1学期間2教材を学習する1年次学生のクラスで2回使用される.問題はコンピュータから提示される音声,設問に対する答を4つの選択肢から選ぶ形式,計20問で,解答結果はすべてサーバーに記録され,後に自動採点される.試験開始後,サーバーには受験記録が保存され,同じ試験問題を2回受験することはできない.習熟度試験の画面例を図28,29に示した. |

図28 習熟度試験画面例(開始画面) 図29 習熟度試験画面例(問題提示画面)
| ■ データベース管理システム データベース管理システムは各種教材,テストのサーバー・データベースへの登録,管理,配信,および学習者情報(学生証番号,氏名,パスワード等)のデータベースへの登録,管理,さらに各種学習履歴を保存,管理するためのシステムである.管理システムの起動には管理者のe-mailアドレスとパスワードの入力が必要となる.図30が管理画面メニューである.データベース管理システムへのアクセスはセキュリティー上の理由から,サーバーが設置されている建物の端末(管理者研究室,教室の端末)からのみに限定した. |

図30 データベース管理システムメニュー画面
| ■ 進捗状況の表示 聴解力養成教材の学習履歴は2種類の方法で観察できる.ひとつは現在の学習位置,ユニットごとの学習時間,総学習時間を学習者ごとに1行ずつ表示する形式(図31)である.履修者全体を見渡し,学習進度の遅れている(進んでいる)学生,学習時間の不足している(充実している)学生を検索し,授業における動機付けのための資料に活用できる.指定された学習者や指定されたクラスの学習者のみの表示も可能である.もうひとつは学習者ごとに学習箇所にどれだけの時間をかけたかを詳細に記録した履歴データ(図32)で学習箇所ごとの所要時間,学習上の問題点を探ったりすることに利用できる. 語彙力養成教材についても語彙力養成教材同様,学習セットごとの学習時間,総学習時間を学習者ごとに1行ずつ表示することと学習者ごとに各学習セットにどれだけの時間をかけて学習したかを詳細に観察することが可能である.なお,聴解力,および語彙力養成教材の学習履歴データはブラウザで観察するだけでなく, Excelファイルとして保存することが可能で,必要に応じて,学習者時間をヒストグラム表示するなどして学習者に提示できる. |

図31 全学習履歴表示画面 図32 学習者ごとの詳細学習履歴表示画面
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■ コースウェアの追加 |

図33 コースウェア追加画面例
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■ メンバーの追加,変更,削除 |

| ■ 管理者の追加 データベース管理システムの管理者を追加するメニューで,管理者e-mailアドレス,パスワード,管理者名を入力する.現時点では本学教員2名,およびサーバー管理を委託しているプログラマの3名のみが登録されている. ■ テストの開始/終了 単元別試験,および習熟度試験への学習者の受験を許可するための機能で,試験問題への不正アクセスを禁止する目的で設定された.図35は学期末(習熟度)試験へのアクセス許可を示した例で,開始,終了ボタンはOn/Off切り替えのトグルスイッチとなる.受験許可は学習者登録番号ごと,クラスごとの指定が可能で,図35の例では2009年(09),後期(2),火曜(2),4限(4)の授業を履修する学生へのテストアクセスを許可していることを示す.2009年後期に授業を履修する複数の曜限の学生を対象に受験を許可する場合は 「登録番号」に092を指定する.なお試験実施者がテストアクセス許可の解除を指定し忘れた状況を想定し,アクセス許可後,一定時間後にはアクセス不可となるように設定されている. |

| ■ テスト履歴のクリア 単元別試験,および習熟度試験は受験開始時に受験終了記録がデータベースに記録され,同一学習者の同一試験への再受験を禁止している.本機能は端末機のハードウェア故障,通信エラー等により受験が中断した場合,受験終了記録を消去し,当該学習者に同一教材を再度受験することを可能とするものである.テスト履歴のクリアには当該学習者の学生証番号と教材名の入力を行う. ■ 学期末(習熟度)試験の採点 4択形式の習熟度試験への学習者の解答結果を採点するための機能である.学習進捗状況表示機能と同様,全学習者,指定された学習者,および指定されたクラスの学習者の受験結果の表示,Excelファイルへの出力が可能で,成績管理用Excelファイルへの統合も容易である.出力例は図36に示したが,登録番号,学生証番号,氏名,得点,教材名,試験開始時間,終了時間に加え,当該教材の延べ学習時間が出力され,学習時間と習熟度の関連を観察することができる. |

| ■ Offline CALLシステム Online CALLシステムは学習者すべての学習履歴をサーバーで管理することが可能なため,教師が学習者すべての履歴を随時観察できるばかりでなく,学習者にとっても他のパソコンで学習する際,自分の学習履歴をフロッピーディスクやリムーバブルディスクを使用して移動させる必要がないため極めて有用なシステムと言える.しかしながらそのためには,独自のサーバー,データベースの構築,管理が必要となり,千葉大学で開発した聴解力養成用教材や語彙力養成教材を他大学や個人学習者が使用する形態を考えた場合,必ずしもその利用が容易でない.そこで本研究では聴解力養成,語彙力養成教材をCD-ROM配布して,スタンドアロンの形態で,もしくは教材データをレンタルサーバーを含むWebサーバーから配信し,学習履歴をローカルディスク(ハードディスク,フロッピーディスク,USB メモリ等)に記録する形態で使用できるOffline版も同時に開発し,より多くの教育機関,ユーザーの便に供するようなシステム開発を行った. Offline版は同時に,千葉大学におけるOnline CALLシステム非常時の支援的機能を果たす.開発されたOnline CALLシステムはセキュリティー対策を何重にも施し,主サーバーダウン時には予備サーバーに自動的に切り替わる機能を有しているが,それでも機器は故障することがある.機器が古くなればその可能性は増加する.この理由から本学CALLシステムでは各端末にOnline版と互換性があり,かつスタンドアロン形態で作動するOffline版を装備させ,有事に対処する形態とした.Offline版システムでの学習メニューは図37に示した. |
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| ■ 多種OS,ブラウザに対応したシステム 図9に示したように本事業で開発した聴解力養成,および語彙力養成Online CALLシステムはWindowsおよびインターネットエクスプローラの使用を前提とするため,Macなどの他のOSやFirefox,Google ChromeのようなWebブラウザでは使用できない.そこで本事業では図38に示したようなJavaをプラットフォームとしたWebアプリケーションシステムを別途開発することにより,各種OSや専用のブラウザ,メディア再生プログラムに依存しない,聴解力,および語彙力養成CALLシステムの作成(塩澤,2010)も試みた. 開発されたシステムは図9に示した下から2段目のIEおよびJavaScriptをJavaに置き換えたもので,他の各種メディアや教材コースウェアのxmlファイルは共通である.開発されたシステムにより聴解力教材をWindowsおよびインターネットエクスプローラ以外の環境で実行した例を図39,40に示した.現時点では学習履歴をサーバーに残す機能は未装備なものの,教材のWeb配信,リムーバブルディスク等への学習履歴の保存が可能で,Macの使用率が高いデザイン系専攻の学生に現在使用されている. |
![]() ![]() 図39 Mac OSX Leopard での実行画面 図40 Ubuntu 9.10 (Linux) での実行画面 |
| ■ システムの試用 平成19年度より開発に取り組んだOnline CALLは平成19年度後期,平成20年度の一部のクラスでの試験的使用を経て,平成21年度より普遍教育英語科目「CALL英語」全クラスでの使用に移行した.いずれのクラスも理解度・進度確認のための小テストおよび異文化情報による動機付けを重視した授業に,週最低90分の自習組み合わせたもので,従来のOffline型CALLのために開発されたカリキュラムを変更せずに,継続使用した. 平成19年度後期については,Web配信した教材を家庭で学習した学習者34名と自習室を使用して学習した93名のCALL 教材に対する評価を比較した.結果は表11に示した(紙面上の制約から新システムによる家庭学習と従来のシステムによる自習室での学習が同評価の場合も●で表記した).2年次以上のクラスのみの集計となるため,1年次学生を含めた結果ほどの高い評価(表11)ではないにせよ,これまで高い効果をあげてきた従来のOfflineシステムと同様,またはそれ以上の評価が得られていると考える. |
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![]() 図41 Online CALLと他の英語授業に対する評価 |
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| これらの結果から,従来高い効果をあげてきた本学のCALLシステムは,Online化しても学習者による評価には大きな変化がないことが確認されたと考える.当初,CALL教材のOnline配信は「いつでも学習できる」つまり「いつか勉強すればよい」そして「いつも勉強しない」という流れになりかねないと危惧していたが,適切なカリキュラムがあれば学生は懸命に勉強し,「この授業を取ってよかった」とまで感じるに至るということが明らかとなった. |
| ■ まとめ 本事業は本年度をもって終了する.教室,サーバー等の施設については一応の完成を見たと考える.我々がこの事業で開発した教材数は,1) 聴解力養成EGP CALL教材 14種,2) 語彙力養成EGP CALLシステム 8種,3) 専門・学術語彙力養成ESP CALL システム 7種,4) Online講義用ESP CALL システム 21種,50本である.これだけの量の教材,教材配信システム,学習履歴管理システムを有するCALLシステムは国内外を見ても多くはないと考える.しかしこれで教材の量が十分だというわけではない.学習者の多様な英語力レベル,興味,専門性に対応する教材提供の基礎ができたに過ぎない.今後は教材のさらなる新規開発に加えて,統合型英語Online CALLシステムの他大学との共同利用,他大学との教材共同開発なども視野に入れ,本システムが千葉大学学生の英語力向上のみならず,国内の大学生の英語指導に寄与できることを期待している. 我々がCALL教材の開発に着手したのは言語教育センターの前身である外国語センター設立の1994年であった.MS-DOS機器を使用してオーディオCDをコントロールする形態の初期システムから1998年以降のWindows機スタンドアロン版教材の開発を経て,本プロジェクトで教材のOnline化,および機能拡充が実現されることとなる.ハードウェア,ソフトウェアに大きな変遷があっても,唯一大きな変更のないのはCALL 教材開発の理論的基盤となっている学習理論「三ラウンド・システム」である.逆の言い方をすればこの学習理論なしにこの長きにわたってのCALL教材開発はあり得なかったということである.理論の開発者である千葉大学名誉教授竹蓋幸生先生には感謝して止まない.また本事業を遂行するにあたり多大な協力をいただいた,教員,職員,非常勤職員,学生,院生諸君にも感謝の意を表したい. |
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